CRE-Lab.FORUM2024未来と創造~創造性セッション~
こちらは、2024年7月7日に行われたCRE-Lab. FORUM 2024の2日目11:00〜のプログラム、「創造性セッション」のレポートです。
創造性セッション①
稲田佳彦教授(岡山大学)×堤祥晃先生(北海道教育大学附属釧路義務教育学校)
※セッションで取り上げる内容は堤先生が安曇川中学校に勤務されていた頃の実践
・総合的な学習の時間をどう使うか
堤先生は、生徒が創造性を発揮できる場の条件として、①答えのない問いに取り組めること、②委ねられるところは生徒に委ねることを挙げられていました。ご紹介いただいた実践では、「ゴミ拾いを楽しくしたい」「アクセサリーを作って売った利益で、募金をしてみたい」など、生徒のそれぞれの問題意識や興味によって、チームを振り分け、自分たちで考え決めた活動に取り組ませていました。
・若手教員をいかにしてクリエイティブエデュケイター(以下CE)に育成するか
CEとは、地域社会や学校現場に創造性で新しい価値を生み出す人材のことです。CEによる教育活動で、創造性豊かな子供たちが育まれ、他者と協力しながら未来の社会に新しい価値をつくっていくことが期待されています。
子供たちが自ら課題をつくって探究活動に取り組む教育実践に、CEである堤先生と若手教員が一緒に取り組むことで、若手教員のCE化を目指します。若手教員の方からは、「普段あれさせなきゃという思いが強かったが、生徒の『○○したい』に応えるのも教師の役割だと感じた」という声や、「生活や授業の中でいかに子供たちの意見を引き出せるかが大事だと分かり、一緒に考えられるような工夫をもっとしていきたいと思った」などの感想がありました。
この活動を通して、先生方の学校でできることの想定や、生徒に委ねることの受容の幅が拡がったのかもしれません。
創造性セッション②
松浦藍助教(岡山大学)×木村仁先生(滋賀大学教育学部附属小学校)
実践題材:「傘×青空」で〇〇と新しい関係
・子供たちに想定外の状況、「学び」が生まれるには
このご発表では、子供たちの「いいこと思いついた!」=想定外の発見を、創造性の変容のきっかけと捉えて、子供たちが空気や光や傘との新しい関係をつくる様子を考察していきました。傘は子供たちが普段使っているものよりも大きくて軽いものを用意し、机などは置かずに外で活動されました。
①空気との新しい関係
傘を引きずって走ってみたり、朝礼台からジャンプしてみたりする子がいました。先生が「どんな感じがする?」と聞くと、「ひっぱられる感じ」「飛んでいる感じ」などと答えていました。
②光との新しい関係
「透明が面白い」と言って、地面と傘の距離を変えて影を観察したり重ねたりしている子がいました。また、マーカーで傘に絵を描き、「空に絵を描いているみたい」「世界が青くみえる」と言っている子もいました。
③傘との新しい関係
傘をこまのように回してみたり、鉄棒に引っ掛けて揺らしたり、鎌倉のようにして入ったり、様々な使い方で遊んでいる子たちがいました。晴れている日に傘をさすという状況が、子供たちにとって傘を雨具ではないものに変えたのかもしれません。
これらの様子から考察してみると、子供たちは空気抵抗や重力を自分ごとの学びとして捉えられており、この経験が今後の他の教科での学びにつながっていくのではないかと松浦氏は言います。また、木村先生は子供たちがなんとか伝えようとした発見を、教師が別の言葉で言語化し、価値付けをして返すことが大切だと言います。そして、そのような声掛けをするためには、教師が用意した枠組みだけで子供たちを測ろうとしないことが重要だと話されていました。
創造性セッション③
学びのイノベーション・プラットフォームPLIJ×稲田佳彦教授(岡山大学)、教育学研究科教育科学専攻大学院生チーム 部矢有紀さん 武田晏奈さん 横溝俊さん
・PBLで高校生の学びの伴走に挑戦する
高校生の探究活動を自分事にして、自己決定を促すために、ウェビングマップを使った思考法や生徒間の意見の共有の仕方を工夫されていました。思考を可視化するトレーニングをしたことによって、「チームメンバーのタスクの共有がしやすくなり、今までは1人でやろうとしていたことを、友達に頼れるようになった」という生徒の声がありました。
また、生徒の自己決定を尊重する観点では、伴走者(今回は大学院生たち)として待つことの重要性を学べました。部矢さんは、「これまでは子供たちの活動の着地点を決めなければならないと思っていたが、子供たちが自由に発想できる環境づくりを支援することも大切だと気づいた」と、自身の変容を分析されていました。
◯創造性セッション
コーディネーター:赤木里香子教授(岡山大学)
CEが学校にいることによる周りへの影響として、CEを取り入れることで、先生自身も変容していく、ということがあります。様々な属性の他者との協働や、生徒の発見や疑問に目を向けることで、自分の専門からの視点だけではなくなり、普段なら見逃していたかもしれないことに気づける可能性があります。子供の営みをより意識できるようになったという先生もいらっしゃいました。
学校という場所の性質からは、生徒も教師も自分で「こうしなければ」と制限をかけている可能性があるという意見が出ました。生徒自身が、自分で考え取り組んだことを認識できるようになれば、学校生活が楽しくなっていくのかもしれません。
しかし、教科に立ち返った時に何が必要かを考えることも重要です。また、教師や生徒が新しいこと・知らないことに向かう姿勢が続く仕組みをどのようにつくっていくのかについて考えることが、今後の課題だと感じました。
文:スイミー
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