千總文化研究所様での手描き友禅体験

2025年2月18日、28日の2日間のプログラムで、京都の千總文化研究所にお伺いし、友禅染の体験をさせていただきました。


1日目は、研究所内を見学させていただいた後に、下描き、糸目を引く体験をしました。

お着物は工程ごとに専門家がおり、企画ごとにそれぞれの専門家を集めて、チームをつくって製作されているそうです。

企画担当の方が色や図案など、全体の計画をし、工程ごとの担当者の方とイメージをすり合わせていきます。

着用したときに美しくなるように柄の位置を調整したり、縫い合わせの部分が複雑な柄にならないようにしたり、それぞれの工程の方が、他の工程の人や着用者など、他の人のことを思ってご自身の専門性を発揮されているのが格好いいなと感じました。


下描き・糸目つけ体験

下描きは、線が後で消えることが重要です。

昔はおしばなをつかっていたそうですが、栽培農家が少なくなったことや、自然のものなので落ちないこともあるそうで、現在は水と熱で消える化学あおばな(でんぷんとヨウ素液を混ぜたもの)を使用しているそうです。

職人さんは細かい柄でもきれいに下描きされていましたが、実際に私たちがやってみると、すぐに滲んでしまって、まっすぐな線を引くのも難しかったです。


糸目というは、色を染める際の防波堤のようなものです。

柿渋を塗った和紙の袋に真鍮の絞り口をつけて、揮発性のゴムのようなものを下描きした線においていきます。

これもまた、均一な線を引くのがとっても難しい!

お手本を見せてくださった職人さんは、ある程度できるようになったと思えるまで10年かかったと教えてくださいました。



2日目は、様々なお着物を見せていただいた後に、彩色(友禅染)の体験をしました。

留袖、訪問着、小紋など、TPOに合わせてお着物の形や柄を選びますが、明確にルールが決まっているわけではないそうです。

椅子に座った時に胸元に柄があると華やかだから、会食の時に訪問着にしたり、庭園などの日本的な場所に訪問する際に西洋的な柄ではなく古典的な柄を選んだり、その場所にふさわしいか、自分や見た人にとって心地よいかという心遣いなんだと学びました。

1日目に研究所内の見学をさせていただいたときに、刺繡をされていた職人さんが、出したい雰囲気に合わせて糸をよる本数やより方を変えるとおっしゃっていましたが、近くでお着物をみせていただくと、染め方や縫い方の違いがよくわかりました。

実際に羽織らせていただいたのですが、さらっとつるっとした着心地が気持ちよかったです。

10年後、20年後、着るときの所作も美しいような大人になれていたらなと思いました。


友禅染体験

黄色、青色、赤色、白色、黒色の5色をつかって、糸目を引いた布に彩色していきます。

イメージした色をつくるのも難しいですし、はみ出さないように塗るのも難しかったです。

私は普段顔料(アクリル絵の具)をつかって絵を描いているので、染料の、布の上での動き方や、布の色をふまえての決めた色をおいていくことに、なかなか慣れませんでした。

本物の友禅染の材料をつかって、染まっていく色の美しさに感動したり、グラデーションをつくろうと試行錯誤したり、とても楽しく貴重な経験をさせていただきました。


顔も知らない誰かのためを思ったり、他者の考えを汲んでつくるという仕事の尊さや、ひとつのもの・ことに対してさまざまな人の思いや力が関わってできているということを伝えられる教員になりたいです。

千總文化研究所の加藤様、蒲池様、このような機会をつくってくださった先生方、誠にありがとうございました。


文:スイミー

岡山大学 清田哲男研究室

岡山大学で美術教育・創造性教育を研究している清田哲男研究室の学生・院生によるBLOGです。清田哲男教授のご指導の元、学部生7人、修士課程2人、博士課程3人、助教1人の計12人で、岡山大学を拠点に、教育の可能性を広げる研究・実践を行っています。子どもたちの豊かな未来を想い、日々活動しています。

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