令和7年度夏季研修津山市学校教育研究センター図工部会

2025年8月20日、津山市での図画工作の研修会にお伺いさせていただきました。

清田先生による講演のテーマは「立体造形の基礎と授業づくり」です。

これからの美術教育を通して子どもたちにできるようになってほしいことは、大きく3つあります。

①自分の夢や理想を表現主題や学びの目的にする

②発達の状況に合わせて、空間の認識を自覚する

③自分(身体・心)と世界(他者・環境・社会・素材等)と新しい関係や幸せな関係を創造する

とくに③の新しい関係をつくるというのは、情報化や自然災害など、変化のめまぐるしい現代において、状況に応じてさまざまな関係をつくれるようになっておくと、困難な状況でもあきらめず、楽しみながら解決策を探していけるかもしれません。


これまでの実践を紹介しながら、研修に参加された先生方自身が①②③を実感していただけるように、2つのワークに取り組みました。


●天井に届け!協働の紙コップタワー

1チーム4人、紙コップの数は320個です。

チーム対抗で、時間内に紙コップをどれだけ高く積めるかを競います。

ただし、各人には制限が課されており、1人は利き手が使えず、1人は眼で見ることができず、1人は立ち上がることができず、1人は話すことができません。

それぞれが制限のある状態で、役割を見つけ、作戦を立てながらタワーをつくっていきます。


トランプタワーのように横に上に積み上げるチーム


320個全てを重ねた状態で立たせようと試行錯誤するチーム


結果は一番前の席と右後ろの席の同時優勝でした。

紙コップタワーが完成すると、皆さん写真を撮られます。

始めに紙コップが置いてあったときには特に気に留めなかったと思いますが、集中してチームメイトと積み上げたという経験によって、紙コップとの間に新しい関係・価値ができた瞬間です。


また、紙コップタワーが倒れたり、片づけたりしたときに、ぽっかりと空間に余白が空いたように感じられます。

このように、体をつかって構造物をつくることによって、身の回りの空間を実感することができます。


●水の流れのように

「水の流れのように」は、日本文教出版様の小学校5・6年生の題材です。

白土の粘土を紙皿に押し当てて土台をつくり、ガラスの破片を乗せて焼成すると、ガラスが溶けて水の流れのようになります。

お皿にぎゅっと押し付けて成型するのは、土に空気がはいったまま焼いてしまい、窯のなかで爆発するのを防ぐためです。

”どんな風に流れたら面白いか”を考えて、思い思いの形をつくっていきました。

始めに、20kgの粘土の塊から自分で使う分の粘土を切り取っていきます。

見たことのない量の粘土を持ったり、糸でかきとったりするだけで、自然と造形表現活動が始まっていきます。

先生方が粘土の楽しさを知っていると、子どもたちにもそのような環境をつくってあげられるのかもしれません。


大学のハイエースに作品を載せて帰るときにはどきどきしました💦

うまく焼けることを祈っています。


今回の講演で、先生自身がまず楽しむことの大切さを改めて学ばせていただきました。

私自身も中学校で美術の授業をさせていただいているのですが、毎回「今日はここまで進められるかな」「これでよかったかな」など、進捗を気にしてしまったり、不安になったりします。

しかし、やらないといけないからするのではなくて、面白そうだからやってみたり、自分でポイントをみつけて学んだりしてもらうためには、先生自身もやってみたいことを一緒にするという学びの姿勢が必要だと思います。

これからは私も毎回の授業のなかで必ず一つは自分の面白いポイントを見つけて取り組んでいきたいと思いました。


文責:スイミー

岡山大学 清田哲男研究室

岡山大学で美術教育・創造性教育を研究している清田哲男研究室の学生・院生によるBLOGです。清田哲男教授のご指導の元、学部生7人、修士課程2人、博士課程3人、助教1人の計12人で、岡山大学を拠点に、教育の可能性を広げる研究・実践を行っています。子どもたちの豊かな未来を想い、日々活動しています。

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