高砂市立中筋小学校授業研究
10月29日,高砂市立中筋小学校の授業を見学させていただき,研修会に参加しました。
見学させていただいたのは,第3学年の図画工作「ようこそ真っ白な○○○へ」という授業です。授業者は担任の先生です。
真っ白な画用紙を折ったり,曲げたり,つないだりながら,紙の特性やホチキスの使い方を学んでいきます。
紙を細長く切った短冊と,ホッチキスが学習班ごとに用意されていました。
また,教室の後ろには壁から壁へ紐をかけた展示スペースがあり,児童たちはそこに紙の造形物をつるすことで,「浮かせる」という空間への働きかけや,新たな作品へのイメージをふくらませていきます。
・「世界記録や!」
紙の短冊をどんどんつなげて,ながーい鎖をつくっている子たちがいました。
一人の子が「世界記録ちゃう!?」と声をあげ,後ろの展示スペースにかけていきます。
なんとなくか,意図的にかはわかりませんが,つなげて長くするという何気ない行為が,”世界記録”ほど長いものをつくってみんなを驚かせようという,大きな夢に変わっていく瞬間でした。
・「他の子はしていないギザギザがすごいね」
授業の終盤に,友達のすごいところを見つけて発表する時間がありました。
紙を輪っかにしたり,輪っかを変形させたりした作品は多くありましたが,短冊を細くきったものをたばねて,ギザギザした感じを活かした作品は少ないことに気づき,そこを「すごい」と言っていた子がいました。
周りの子をよく見ていて,共感できる部分や,自分との違いを学んでいるようでした。
褒められた子も,自分のすごさを他の人から言葉で表してもらって,より自信が持てたようでした。
・「私もやってみよう」
相互鑑賞の後,さっそく友達のすごいところを真似してつくっている子がいました。
真似をするのは,悪いことではありません。
友達のすごいところを見つけられたということは,その「すごさ」を見つけた子自身も持っているのだと,清田先生は言います。
自分のすごいところを,友達の中に見つけるー
そして,それを真似してみたり,参考にしたりすることで,イメージだけでない自分のできることが広がっていくのかもしれません。
●研修会
研修会は,第三観点をどう見取るのかという視点で話し合いました。
学びに向かう力を評価することは,その子が状況と自分との新しい関係をどうつくれるか,どうつくろうと努力しているかを見ることとも言えます。
普段のその子のふるまいや,授業での発言や視線をよくみていると,何を目指して,どんな風に頑張ろうとしているのか,なんとなく見えてきます。
ANCSホームページより https://ancs-site.studio.site/fan
学びの扇は,子どもたちがPlay(遊び,自分や友達と決めた活動)に向かおうとしているのか,Direct Instruction(指示,先生や教科書から教わる活動)に向かおうとしているのかを,先生が振り返るためのツールです。
学びの扇が,子どもたちが「見ようとしている方向」を見るのを,手助けしてくれるかもしれません。
質疑応答より
?:学びの扇は,PlayとDIを行ったり来たりするほどよいのですか。
A(清田先生の考え):行ったり来たりしているのがよい,というわけではなくて,子どもがどこにいるのか,どこにいようとしているのかを見取れることが重要です。
先生としては,どこに行ってもよいよという心構えでいたいですね。
?:一人で居る子の判断が難しいです。(熱中している,その時だけ一人でいたい,のか。他の子と関われるように介入した方がよいのか。)
A:先生同士の連携が重要です。いろんな先生から見た意見,とくに担任の先生の見取りを聞いてみましょう。友達に誘われて気分ではないが「Play」の側にいるのか,自分から試したいことがあって「Play」の側にいるのか,本当はどっちに向かおうとしていて,今の状況と違和感があるのかどうかは,よく見ている人にはわかるかもしれません。
私は,学級づくりの延長で図工があると考えています。
人間関係が築かれる中で,「こんなことしてみたい」「いいこと思いついた!」が生まれる。だからこそ,担任の先生が図工をする意義は大きいのではないでしょうか。
そこに追加して,位置を使った造形遊びの効果や,材料の特性を生かした表現方法など,専科の先生の視点も必要です。
図工・美術の時間につくるべきは「新しい関係」です。
ものをめぐる状況そのものが,「新しい関係」を示しています。
子どもたちがどのような方向を向き,ものや状況との新しい関係を築こうとしているのか,丁寧に見つめる視点を大切にして,明日からも研究に励みたいと思いました。
スイミー
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