工芸科指導法の授業で【備前焼】について学びました
2026年2月27日工芸科教 育法・指導法の授業の一環で、備前焼作家の松井宏之先生にお越しいただき、備前焼の成型体験や、貴重なお話をうかがいました。
松井先生ホームページ:http://bizen-matsui.com/matsui.html
実際に制作して感じたこと・学んだこと
今回の成型体験では、備前の土に直接触れ、抹茶茶碗やコップ、一輪挿しなど、それぞれが思い思いの作品づくりに取り組みました。最初に基本となる茶碗の作り方を教えていただき、厚みの整え方や口縁の処理など、ひとつひとつの工程に意味があることを実感しました。
しかし、いざ自分の手で形にしようとすると、思うように整わず、歪みが生まれたり、厚みが均一にならなかったりと、もどかしさを感じる場面もありました。それでも、完成した姿を見てみると、その歪みや揺らぎが不思議と魅力になっていることに気づきました。
同じ作り方を学んでいても、手の大きさや力の入れ方、身体の動かし方の癖によって、出来上がる形はまったく異なります。まるでその人自身がそのまま映し出されたかのように、「らしさ」が器に宿っているように感じました。既製品や大量生産品では味わうことのできない、手仕事ならではの温かみを肌で感じる体験でした。
また、備前焼は釉薬を用いず焼き締める焼き物であり、窯の中で置かれる位置や灰のかかり方によって、焼き上がりの景色が大きく変わります。同じ窯に入れても、同じ表情にはならりません。その偶然性が備前焼の魅力の1つだと感じました。自分の作品がどのような景色をまとって戻ってくるのか、今から胸が高鳴ります。
お話を通して学んだこと
講義では、「なぜ備前焼は八百年続いてきたのか」という問いを軸に、伝統の本質について考える時間となりました。
備前の土は収縮が大きく、扱いが難しいという特徴があります。しかし、その性質があるからこそ複雑で豊かな景色が生まれます。弱点を排除するのではなく、受け止め、活かすことで独自の価値へと転換してきた歴史があることを学びました。
さらに印象的だったのは、「伝統を守る」とは単なる継承ではないというお話です。代々受け継がれてきた技や美意識を尊重しながらも、同じことを繰り返すだけでは伝統は続きません。時代や社会の変化、人々の暮らしや需要に応じて問い直し、変化し続けてきたからこそ今があるという視点でした。
授業の中で紹介された、岡倉天心の「変化こそ唯一の永遠である」という言葉、そしてオットー・フォン・ビスマルクの「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉は、特に心に残っています。一見すると、伝統とは相反するように思える言葉ですが、形を固定するのではなく、歴史を学びながら時代ごとに更新していく姿勢こそが、本当の意味での「継承」なのだと感じました。
また、作家として窯を築き、地域や多くの人々と関わりながら制作を続けていく姿勢からは、社会の中で生きるということの重みも伝わってきました。素材を大切にし、人との関係を大切にし、自らの道を切り拓いていく。その在り方は、ものづくりに限らず、これからどのように生きていくのかを考える上で大きな示唆を与えてくれました。
今回の学びは、単なる陶芸体験ではなく、「伝統とは何か」「変わり続けるとはどういうことか」「社会の中で生きるとはどういうことか」を問い直す時間でした。
土に触れたときの感覚、思い通りにならない形、そして先生のお話の一つ一つが、これからの自分の学びや生き方に静かに根を張っていくように感じています。
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